夏夜の停電に扇風機だけで足りるのか

Jackery708の液晶表示。出力53W、残量85% 防災・ガジェット
コーディー
コーディー

前回、ポータブル電源を「買っただけで安心していた」という話を書きました。箱を開けて、充電して、押し入れにしまう。それで備えたつもりになっていたのです。でも、確かめていないことがひとつありました。

モンロー
モンロー

エアコンが止まった夏の夜、扇風機の「弱」だけで、人は眠れるのか。

コーディー
コーディー

カタログには708Wh、定格500Wと書いてあります。けれどそこには、汗が引かない夜をどう過ごすかは書かれていません。だから8月31日の深夜3時30分、実際に停電を想定した環境をつくって試しました。

結論:扇風機だけでは足りない。冷やすべきは首元だった

先に答えを書きます
  • 明かり:半径2メートルの床が照らされ、足元が見える。ただしその円は1人ぶん
  • 送風の限界:扇風機を首振りにすると、風が外れている間に汗が引かず、身体がじとっとベタつく
  • 対策水で濡らした手ぬぐいを首に巻くと、気化熱で首元がひんやりして体感が下がる

足りなかったのは風量ではありませんでした。足りなかったのは、汗を蒸発させる仕組みのほうです。

以下、実際に体験した順に記録します。

検証1:ライトは人数分あったほうがいい

深夜3時30分。部屋の照明をすべて落とすところから始めました。

外は晴れ。それでも深夜のこの時間は、街の光も届きません。カーテンを閉めた部屋は、本当に何も見えない暗さでした。

Jackery708とソーラーランタン キャリーザサンを設置した停電実験の部屋の様子

使ったのはソーラーランタン「キャリーザサン」

明かりに使ったのは、ソーラーランタンのキャリーザサン(CARRY THE SUN)です。

膨らませて使うキューブ型のランタンで、上面にソーラーパネルが付いています。昼のうちに太陽光で充電しておけるので、ポータブル電源の残量を1ワットも削りません。

これが、実際に試してみて一番大きかった点です。

明かりを別系統でまかなえるぶん、Jackery708の708Whを、まるごと扇風機に振り分けられる。

停電対策というと「何ワット使えるか」に意識が向きがちですが、そもそも電池を使わずに済ませられるものは、電池を使わないほうがいい。当たり前のようでいて、実際に暗闇に座ってみるまで実感できませんでした。

照らせるのは半径2メートル

点灯して分かったのは、照らせる範囲は半径2メートルほどだということです。

部屋の隅までは届きません。けれど床が見えて、足元は確保できます。

停電の夜に怖いのは、暗さそのものではありません
  • 倒れた物につまずく
  • 家具や壁、ドアに足をぶつける
  • 段差を踏み外す

停電時のケガは、ほとんどが「足元が見えないこと」から起こります。 半径2メートルの円が確保できれば、その中では確実に安全に動ける。明かりを持って歩けば、円も一緒についてきます。

ただし、その2メートルは「1人ぶん」

ここに落とし穴がありました。

半径2メートルの円は、1人ぶんの行動範囲でしかありません。

家族が複数いる場合、ライトが1つだとどうなるか。誰かがトイレに立って明かりを持っていけば、残された人はその瞬間から暗闇の中です。

台所に水を取りに行く人、子どもの様子を見に行く人、その場に残る人。停電の夜は、全員が同じ場所にじっとしているわけではありません。

電力も場所も食わないなら、節約する理由がない

そしてキャリーザサンは、手のひらに収まるサイズです。膨らませて使い、たたむと薄くなります。

手のひらに収まるソーラーランタン キャリーザサン
  • 電力を使わない(ソーラー充電)
  • かさばらない(手のひらサイズ・折りたためる)
  • 重くない

この3つが揃っているなら、1つで我慢する理由はどこにもありません。

明かりは、節約する対象ではなく、人数分そろえる対象です。

停電対策は「電気で解決するもの」と「電気を使わずに解決するもの」を、分けて考える。 これがこの夜の最初の発見でした。

検証2:濡れ手ぬぐいを首に巻いたら変わった

服装は黒のタンクトップとハーフパンツ。扇風機はJackery708につないで、風力は「弱」、首振りモードにしました。

検証時の服装、黒のタンクトップとハーフパンツ

それでも、汗は引きませんでした。

じっと座っているだけなのに、背中と首まわりがじとっとベタつく。風は来ているはずなのに、涼しくならないのです。

ベタつきの正体は「蒸発しない汗」

この夜の湿度は81%でした。汗は、蒸発するときに熱を奪うから涼しくなります。ところが湿度が81%もあると、空気がすでに水分でいっぱいで、汗が蒸発しにくい。

さらに首振りモードは、風が当たる時間より、当たっていない時間のほうが長い。その間に汗が肌に残り、次の風が来ても乾ききらない。これが繰り返されて、ベタつきが積み重なっていきます。

「強にすれば解決するのでは」とも考えました。けれど風量を上げれば、そのぶんバッテリーを削ります。しかも湿度81%では、風を強くしても蒸発そのものが追いつきません。

首を冷やすと、全身の体感が変わる

そこで、水で濡らした手ぬぐいを首に巻きました。

水で濡らした手ぬぐいを首に巻いた様子

巻いた瞬間、首元がひんやりします。そして扇風機の風が当たるたび、濡れた布から水が蒸発して、その気化熱で首がさらに冷える。

首には太い血管が通っています。ここを冷やすと、冷えた血液が全身をめぐり、身体全体の体感温度が下がるのです。

面白いのは、その理屈です。

汗が蒸発するのを待つのではなく、蒸発する水を自分で用意してしまう。

ベタつきの原因は「蒸発しない汗」でした。だとすれば、解決策は汗を減らすことではなく、蒸発できる水分をあえて足すことだった。逆説的ですが、これが効きました。

電気を使わない工夫ほど、バッテリーは長持ちする

そして何より、手ぬぐいは電力をまったく使いません。

扇風機の風量を上げれば体感は下がりますが、バッテリーは減ります。手ぬぐいを1枚足しても、バッテリーは1%も減りません。

電気を使わない工夫を足すほど、ポータブル電源は長持ちする。

タオルでも構いません。防災バッグに手ぬぐいを1枚。これだけで、夏の停電の夜が変わります。

検証データ:この夜の条件

再現してみたい方のために、当日の条件を記録しておきます。

気象条件

項目内容
日付8月31日
時刻3:30(深夜帯)
天候晴れ
気温27.0℃
湿度81%

環境設定

項目内容
電源Jackery ポータブル電源 708
送風扇風機/風力「弱」・首振りモード
明かりソーラーランタン キャリーザサン(半径約2mを照射)
服装タンクトップ+ハーフパンツ
体感対策水で濡らした手ぬぐいを首に巻く

電力データ

Jackery708の液晶表示。出力53W、残量85%
項目実測
扇風機(弱・首振り)53W
ランタン0W(ソーラー充電のため電源から給電せず)
出力合計53W
開始時バッテリー残量85%

深夜3時30分を選んだ理由は、条件がいちばん厳しいからです。夕方の停電なら窓から光が入り、街灯もついています。深夜に街全体が停電すれば、外も中も真っ暗になる。そして気温がもっとも下がる時間帯であるはずのこの時刻に、それでも27.0℃ありました。

風力を「弱」にした理由は、電力を使い切らないことが停電時の最優先事項だからです。何時間続くか分からない停電で、最初に全開で回すのはいちばん危ない使い方です。

今日からできる準備

今日からできる準備
  1. STEP 1一度、夜に部屋の電気を全部消して使ってみる
    5分で終わります。これをやった人とやっていない人では、本番の落ち着きがまるで違います。
  2. STEP 2明かりは人数分そろえる
    ソーラーランタンなら電力も場所も食いません。1つで我慢する理由がありません。
  3. STEP 3ポータブル電源の定位置を決めて、家族全員に伝える
    暗闇で本体を探す時間をゼロにできます。
  4. STEP 4手ぬぐいかタオルを防災バッグに1枚
    電気ゼロで体感温度を下げられる、数少ない道具です。
  5. STEP 5扇風機は「弱・首振り」で使う前提で残量を計算しておく
    最初から全開で回さない。それだけで持ち時間が変わります。

まとめ

8月31日、深夜3時30分。気温27.0℃、湿度81%。

扇風機は「弱」の首振りで53ワット。明かりはソーラーランタンで、バッテリーは1ワットも使っていません。それでも汗は引かず、身体はじとっとベタつきました。

その夜を変えたのは、風量でも容量でもなく、水で濡らした手ぬぐい1枚でした。

明かりはソーラー、送風はポータブル電源、体感は濡れ手ぬぐい。役割を分けたから、708Whを扇風機だけに使うことができた。

停電対策は、「電気で解決する」という発想から少し離れたときに、一段先へ進みます。

そして何より——ポータブル電源の充電は急な停電に備えて万全にしておくことです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました